9年前、仕事を休んでフィリピンのセブ島に2ヶ月間、語学留学に行きました。

これまで英語の勉強をいろいろ試してきましたが、いちばん伸びたのは、間違いなくあの2ヶ月です。

ただ、今の僕には同じことができません。この記事はその両方の話です。あわせて、このブログを書いている人間がどういう人間なのかも、ここで自己紹介がわりに書いておきます。

この記事でわかること
・薬剤師が仕事を休んで2ヶ月間、語学留学したときのリアルな話
・1日8コマ、うち6コマがマンツーマンという環境で何が起きたか
・フィリピン留学が「短期集中」に向いている構造的な理由
・現在の費用の目安と、欧米留学との金額差
・いちばんきつかったのは、実は授業ではなかったという話
・当時の時間割と、レベルテストの点数が実際にどう動いたか
・9年経った今、同じ選択ができない理由と、それでも英語を続けている動機

出発点は、卒業旅行で行ったハワイでの小さな後悔

そもそものきっかけは、大学の卒業旅行で行ったハワイでした。

楽しかったんです。ただ、ずっと引っかかっていたことがありました。英語が話せたら、この旅行はもっと面白かっただろうな。その程度の、ふわっとした後悔です。

そのあと、仲のいい友人が留学に行きました。話を聞いているうちに、自分の中の意欲にも火がついて、まずは英会話スクールに通い始めます。

ところが、どうにも上達している感覚がありませんでした。週に1回、決まった時間だけ英語を話す。それ以外の時間は完全に日本語。今思えば当たり前の話なのですが、当時は「自分には向いていないのかもしれない」とすら思っていました。

そこで考えたのが、一気に英語しかない環境に自分を放り込むということでした。

薬剤師が仕事を休んで留学する、という現実的な話

留学すると決めて、次に立ちはだかったのが仕事です。

結論から言うと、僕の場合はタイミングが良かったとしか言いようがありません。ちょうど業務が落ち着いていて、人員も揃っている時期だったんです。

職場には、正直に英語への熱意を話しました。変に理由を取り繕わなかったのが良かったのか、休職はすんなり通りました。

タンゴ
タンゴ
今の職場環境だったら、まず言い出せていないと思います。本当に運でした

ただし、休職中は無給です。2ヶ月間、給料が入ってきません。

行ったのは2017年10月2日から11月24日まで。修了証に書かれている日付を数えると、ちょうど8週間でした。正直なところ、留学費用そのものより、この「収入ゼロの2ヶ月」のほうがこたえました。

本当は3ヶ月行きたかったのに、2ヶ月にした理由

3ヶ月あれば、もっと喋れるようになっていたと思います。実際、最初はそのつもりでした。

それでも2ヶ月にしたのは、理由が3つあります。職場をこれ以上は空けられなかったこと。無給期間がこれ以上延びると資金的に厳しかったこと。そして、後述しますが食事が限界に近かったことです。

今振り返っても、あの条件で取れたのはこの2ヶ月が精一杯でした。期間の長さは「やる気」ではなく、仕事と家計の都合で決まります。

1日8コマ、うち6コマがマンツーマン。フィリピン留学の構造

通ったのは、QQEnglishのシーフロント校です。目の前が海という立地で、校内に寮があり、食事も3食ついていました。

ただしこのシーフロント校は、2022年に閉校しています。公式サイトの告知によると2015年の開校で、僕が通ったのはちょうどその途中の時期だったことになります。現在セブ島にあるのはITパーク校とビーチフロント校の2校です。

QQEnglishシーフロント校の校舎外観

授業は1日8コマ。そのうち2コマがグループレッスンで、残りの6コマはすべてマンツーマンです。

当時の時間割が手元に残っていたので、そのまま載せます。

時間 授業 形式
9:00〜9:50 グループレッスン(English Talk) グループ
10:00〜10:50 カランメソッド マンツーマン
11:00〜11:50 発音(Speech Improvement) マンツーマン
12:00〜12:50 スピーキングB(Daily English) マンツーマン
13:00〜13:50 昼食 ―
14:00〜14:50 スピーキングA(Topic Conversation) マンツーマン
15:00〜15:50 グループレッスン(Lexicon) グループ
16:00〜16:50 ニュース(Beginner News) マンツーマン
17:00〜17:50 リーディング マンツーマン

昼食をはさんで、朝9時から夕方6時前まで。空きコマは1時間だけです。しかも担当の先生は授業ごとに違います。

この密度が、フィリピン留学の最大の特徴だと思っています。

欧米の語学学校では、午前中だけ授業というスタイルも珍しくありません。それに対してフィリピンは、朝から夕方までびっしり。しかもその大半が1対1です。

そして授業料と寮と食事を全部ひっくるめても、欧米とは比べものにならない金額でした。

マンツーマン × 長時間 × 低価格

短い期間で一気に伸ばしたいなら、この3つが揃った環境はかなり合理的です。2ヶ月しか休めない社会人にとって、この構造は理にかなっていました。

校内寮の二段ベッドの部屋

費用は今いくらなのか。欧米と比べてどうなのか

正直に書くと、僕が払った金額はもう覚えていません。9年前ですし、当時の明細も残っていないので、ここで数字を出すことはできません。

代わりに、QQEnglishの公式サイトに掲載されている現在の費用の目安を載せておきます。

期間 費用の目安
1週間 約101,935円
4週間 約242,875円
3ヶ月 約65万円
6ヶ月 約130万円

マンツーマン4コマ+グループ2コマという1日6コマのプランで、1ドル145円で換算した場合の金額として案内されているものです。授業料だけでなく、寮と食事とWiFiが含まれた金額です。

そして、欧米との比較も公式サイトに載っています。同じ4週間で、フィリピンが約25万円から、オーストラリアが約40〜60万円、カナダが約45〜70万円という記載です。

倍近い差がつくうえに、レッスンの中身はマンツーマン中心。この構造は9年前も今も変わっていないようです。

上記は2026年10月時点で公式サイトに掲載されていた内容です。為替レートや時期によって変動しますし、プランの構成も変わります。実際に検討される際は、必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。なお、僕が受けていた「1日8コマ(うちマンツーマン6コマ)」という組み方は当時のもので、現在は4コマ・6コマ・8コマから選ぶ形になっているようです。

いちばんきつかったのは、授業ではなく食事でした

意外に思われるかもしれませんが、僕がいちばん苦しんだのは授業ではありません。

最初の2週間、食欲がまったく湧きませんでした。

現地の食事がまずいわけではないんです。むしろ美味しい。ただ、油の質なのか何なのか、体が受けつけない。結果としてしっかり痩せました。

そこは1ヶ月ほどで慣れて、普通に食べられるようになりました。問題はそのあとです。

1.5ヶ月を過ぎたあたりから、日本食が恋しくて仕方がなくなりました。

日本食のお店にはよく行きました。セブにもちゃんとあります。でも、別物なんですよね。あれはあれで美味しいのですが、僕が食べたかったものではなかった。

留学のきつさというと語学や人間関係が語られがちですが、僕にとっての最大の敵は、食のホームシックでした。

留学中に毎日食べていた学校の食事

留学中に毎日食べていた学校の食事

留学中に毎日食べていた学校の食事

発音の授業では、舌の位置まで直されました

授業でいちばん苦しんだのは発音です。

thやRはもちろんですが、sea と see のような違いでも何度も指摘されました。自分では同じに聞こえているのに、先生にははっきり違って聞こえている。これが本当にしんどい。

先生は妥協してくれませんでした。舌をどこに置くのか、どう動かすのか。そこまで細かく教えてくれます。

正直、当時は何度もへこみました。ただ、あれは熱意の裏返しだったと思います。最後に「よく頑張った」と褒められたとき、厳しくしてもらってよかったと素直に思えました。

1ヶ月目、気づいたら自分がペラペラ喋っていた

この記事でいちばん書きたかった場面です。

1ヶ月が過ぎたあるとき、グループレッスンの最中にふと気づきました。自分が、普通に喋っている。

しかも deal with のような熟語が、考える前に口から出てきたんです。

これは、誰かに教わって暗記した表現ではありませんでした。クラスメイトが使っているのを、何度も耳にしていただけです。それがいつの間にか、自分の引き出しに入っていた。

タンゴ
タンゴ
勉強した記憶がないのに出てくるので、自分でびっくりしました

当時はただの感覚だと思っていたのですが、あとで成績表を見返したら、この時期に数字が動いていました。それは後ほど。

伸びた理由は、授業時間だけではなかったと思います

僕がいた時期、生徒は日本人と台湾人が半々くらいでした。

仲良くなったメンバーも、日本人と台湾人が混ざったグループです。そして当然ながら、台湾人の友人とは英語でしか話せません。

週末は一緒に観光へ出かけました。その道中、食事中、移動中。ずっと英語です。

つまり授業が終わったあとも、英語を使う時間が自然に続いていたということです。これが効いたのだと思っています。

教室の中で8時間勉強するだけなら、ここまで変わらなかったかもしれません。

320時間と、テストの点数。2ヶ月を数字で見るとこうでした

ここまで感覚の話ばかり書いてきましたが、当時の書類が残っていたので、数字のほうも出しておきます。

まず、出席の記録です。2017年10月2日から11月24日までの受講時間は、320時間。皆勤でした。

1日8コマ、1コマ50分。それを週5日、8週間。並べてみるとそれなりの量です。日本で週1回の英会話スクールに通っていたころとは、桁が違います。

タンゴ
タンゴ
当時は必死だったので、量として意識したことはありませんでした

レベルテストの推移

入学時と、1ヶ月後、修了時の3回、レベルテストがありました。当時の結果表がこちらです。

テスト 日付 Listening Reading Speaking Writing 総合 判定レベル
入学時 2017/10/2 3.0 7.0 3.6 2.8 4 HIGH BEGINNER
1ヶ月後 2017/10/27 9.0 7.0 4.0 3.2 5 HIGH BEGINNER
修了時 2017/11/24 9.0 9.0 4.7 3.3 6 PRE-INTERMEDIATE

目を引くのはリスニングです。3.0だったものが、1ヶ月後には9.0になっています。

さきほど「1ヶ月が過ぎたころ、気づいたら自分が喋っていた」と書きました。そのテストの日付が10月27日。あの感覚と、数字が動いた時期が重なっています。

おそらく順番としては、まず耳が英語に慣れて、そのあとに口がついてきたのだと思います。周りが使っている表現が聞き取れるようになったからこそ、それが自分の引き出しに入った。

2ヶ月で変わらなかったものもあります

いいことばかり書くのはフェアではないので、伸びなかったところも載せておきます。

ライティングは2.8から3.3。スピーキングも3.6から4.7で、リスニングほど劇的ではありません。2ヶ月で全部が伸びるわけではないというのが、数字を見たうえでの正直な感想です。

総合判定はHIGH BEGINNERからPRE-INTERMEDIATEへ。1段階です。「ペラペラになって帰ってきた」という話ではありません。

それでも、日本にいたころの週1回のペースで同じ変化を起こすのに何年かかっただろうかと考えると、やはりあの2ヶ月は特別でした。

ウクレレの値切り交渉で覚えた単語は、9年経っても忘れません

もともとギターを弾くので、現地でギターやウクレレを手作りしている工房に行きました。お土産にウクレレを買うためです。

せっかくなので、英語で値切り交渉をしてみました。

そこで店員さんに言われたのが、これはとても durable だから安くはできないという一言でした。

durable。耐久性がある、丈夫だ、という意味です。意味は分かる。分かるけれど、そう言われたら引き下がるしかないじゃないかと思いながら、なお粘った記憶があります。

この単語だけは、9年経った今でもはっきり覚えています。

セブ島で購入したウクレレを海辺で弾いているところ

単語帳で覚えた単語は、翌週には忘れていました。でも、自分の財布がかかった場面で聞いた単語は消えない。使う場面があるかどうかが、記憶の残り方を決めるんだと思います。

帰国後、医療通訳を目指して、そして一度あきらめました

QQEnglishのロゴの前で修了証を受け取ったときの写真

帰国した時点では、僕はまだ病院薬剤師でした。

せっかく英語をやったのだから、病院内で医療通訳を兼任できないかと考えて、勉強を続けていた時期があります。本気でした。

その後、結婚して子どもが生まれました。金銭的な事情もあり、調剤薬局へ転職します。

そこで、医療通訳という目標は一度たたみました。

そこからしばらく、英語からは完全に離れていました。仕事と家庭を回すことで精一杯だったからです。

今の僕には、同じ選択ができません

「留学がいちばん伸びる」と書きましたが、じゃあまた行けばいいじゃないか、という話にはなりません。

今の僕には、はっきりと無理な理由があります。

9年前にはなくて、今はあるもの
・妻と、男の子が2人。毎月の固定の出費がある
・子育てを妻だけに任せるわけにはいかない
・職場では責任者の立場。2ヶ月休職したいなどとは言えない

9年前は、業務が落ち着いていて、身軽で、失うものが少なかった。だから行けたんです。あれは実力ではなく、タイミングでした。

薬剤師歴は13年になりました。立場が上がるほど、まとまった時間は取れなくなります。これは僕だけの話ではなくて、多くの人が通る道だと思います。

だからこのブログでは、「留学しましょう」とは書きません。それがいちばん伸びる方法だと知ったうえで、それを選べない人間が書いています。

それでも英語を続けているのは、たぶん趣味だからです

では、何のためにやっているのか。

いちばん現実的な目標は、英語で服薬指導ができるようになることです。僕の薬局に英語圏の患者さんが来るのは月に1回程度ですが、その1回で固まりたくない。実際の投薬でどんな表現に詰まったかは、こちらに書いています。

アイキャッチ:【抗生剤+頓服の鎮痛剤】
【抗生剤+頓服の鎮痛剤】英語でどう説明する?|準備したのに日本語で終わった投薬の話【抗生剤+頓服の鎮痛剤】を英語でどう説明するか準備したら、日本語で会話が済んだ話。それでも役立つ、薬の呼び方と症状の英単語をまとめました。...

それから、旅行をもっと楽しみたい。ハワイで感じたあの気持ちは、結局まだ回収できていません。

そして、子どもに英語の楽しさを教えたい。これは最近になって強くなってきた動機です。

ただ、いちばん正直なところを書きます。

仕事と子育てを優先して走っているうちに、自分の趣味とか、楽しみとか、そういうものをいつの間にか失っていた気がするんです。あれだけ弾いていたギターも、ほとんど触らなくなりました。

そんなときに、英語をやっていたころの気持ちを思い出しました。

今は、英語が趣味なんだと思います。スキルアップのためというより、自分の時間を取り戻すためにやっている。そっちのほうが本音に近い。

タンゴ
タンゴ
毎朝の10分が、今のところ唯一の「自分のための時間」です

その10分に何をしているかというと、英語の漫画を2話読んでいるだけです。

Langaku:アイキャッチ
Langakuの正直レビュー|2026年最新の料金プランと、忙しい時期にこれだけ続いている理由英語漫画アプリLangakuを実際に課金して使っている正直レビュー。2026年9月時点の料金プラン(改定後の最新価格)、無料プランでどこまで読めるか、1日2枚プランを選んだ理由、そしてこれだけでは英語が話せるようにならない理由まで。...

このブログで書いていくこと

「調剤室の英単語帳」では、時間がない中で英語を続けるための記録を書いています。

記録すること自体が自分のモチベーションになりますし、同じような環境で諦めかけている人の参考になればという気持ちもあります。

読んでくださる方に願っているのは、大それたことではありません。

英語を、淡々とした毎日のなかの、ちょっとした彩りにしてほしい。結果としてそれが仕事に活きることもある。だから、諦めないでほしい。それだけです。

医療英語の教材についても、実際に使ったものを個別に書いています。留学から帰ってきて最初に手に取ったのがこの本でした。

薬学生・薬剤師のための英会話ハンドブック アイキャッチ
薬学生・薬剤師のための英会話ハンドブック 第2版レビュー|最初の1冊にすすめない理由セブ島留学から帰っても投薬カウンターで英語が出てこなかった薬局薬剤師が、『薬学生・薬剤師のための英会話ハンドブック 第2版』を実際に使い込んだレビュー。付箋を貼った場所、収録内容、そして最初の1冊にはすすめない理由まで正直に書きました。...

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